翠玉の監察医 真実を知るか偽りに溺れるか
「私は、あなたがアメリカにいた頃の上司の方からあなたのことを任されています。銃撃事件を起こした組織の一員であり、蘭ちゃんを殺そうとした人物のいる国へ行かせることを簡単に許可するわけにはいきません」

碧子の言葉に蘭は「ですが……!」と反論する。決められたことに従順と言えるまでに従う蘭が反論していることに、ゼルダたちは驚きを隠せていなかった。しかし、蘭はゼルダたちのことは目に入っていない。

「どれだけ反対されても、私はアメリカに行きます。危険であることは承知です。ですが、星夜さんは私の命以上に大切な人なのです。助けに行かないという選択は私の中に最初から存在しません」

蘭が強い目で碧子を見つめると、碧子は「あなたがそこまで言うなんてね」とフウッと息を吐く。そしてコーヒーに口をつけた。

「あなたが感情をこんなに見せるなんて、きっと星夜さんという人は素敵な人なのね……」

碧子は切なげに微笑み、「行ってきなさい」と言う。蘭は「ありがとうございます」と頭を下げ、立ち上がった。
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