【完】今夜も愛してあげる。
Chapter.6
◇
1時間程電車に揺られ、窓の外の景色を眺める。
今日は朝哉さんに会いに行く日。
出勤する前に防犯ブザーや催眠スプレーを持たせてくれた。
完全に朝哉さんを危険人物扱いしてる……
指定された公園は湊叶さんの母校の近くにあるらしく、春になると桜が満開に咲いて綺麗なんだって。
やっぱり贔屓目に見ても、彼が恨みを買うような事をするとは考えられないから、あの人が意地張ってるだけなんじゃないかと思えてきた。
憶測したら駄目なのは分かってるけど。
駅に着いて、教えられた通りの道を歩くと桜木公園と書かれた看板が目に付いて中に入る。
すると、全身黒で統一した格好の朝哉さんがまだ蕾しかない桜の木を見上げていた。
「こ、こんにちは」
「……本当に来た」
来いって言ったの朝哉さんでしょ。
と言う言葉は飲み込む。
「約束通り来たので、湊叶さんと早く仲直りしてあげてください。ずっと落ち込んでて見てられないので」