すてきな天使のいる夜に
ーside 翔太ー



沙奈の体を持ち上げた時、思わずハッとしてしまった。




沙奈の体は、自分の想像以上に軽く細いことに気づいた。




俺達は交代で、沙奈に負担がかからないようにと、勤務を調整してなるべく家を開けないようにはしていた。



俺か、紫苑のどちらかは家にいるように心掛けていた。



だけど、どうしても難しい日もあって、たしか先月はそんな日が続いてしまっていた。




もう少し、注意深く食事も見なければいけなかった。




「沙奈…。」




俺の膝の上で、穏やかな表情をして眠る沙奈。



よかった。



浜辺で沙奈を見つけた時は、思い詰めた表情をしていたから。



今にも、海の中に飲まれていきそうで怖かった。




少しでも、表情が和らいでよかった。



沙奈の気持ちを、言葉で聞くことが出来てよかった。



本当は、ずっとこうしていたいけど沙奈の体が冷えたら大変だよな。



沙奈は、人よりも体温が低いから少しの気温の変化に注意しなければいけない。




「体、温かいな。」




それにしても。




本当に沙奈は美人だよな。




自分でも驚くほどに、心臓の鼓動が加速していた。




血の繋がりがないとはいえ、沙奈は妹だ。




それに、10歳も歳下の女の子に手を出すわけにはいかない。




そんなことしたら、紫苑に顔向けできない。




「参ったな…。」




自分でしたこととはいえ、つい沙奈の寝顔にうっとりとしている自分がいた。




気づいたら、沙奈の頭を優しく撫でていた。




お風呂上がりで、シャンプーの香りが優しくフワッと香ってきた。




自分と同じシャンプー使ってるけどな。




艶のある癖のないストレートのサラサラな髪。




さて。




もっと沙奈の髪を撫でていたいけどこのままにしていたら風邪ひくよな。




沙奈を姫抱きにし、沙奈のベッドへ運んだ。




優しく布団をかけてから、クローゼットに掛けられた制服に目をやる。





「沙奈ももう、高校生なんだよな。」




嬉しいような、少し寂しいような。




沙奈ももう、年頃だよな。




「ん…。翔太…。」




突然、沙奈に名前を呼ばれ振り返った。



「ふふ。寝言か。」



それから、しばらく沙奈の眠りを見守り部屋を後にした。
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