すてきな天使のいる夜に
ーside 沙奈ー


昨日のことが、思い出せない。




自分の足で、ベッドへ戻った記憶がなかった。



翔太の温もりに安心して、眠ってしまったんだっけ…?



思い出そうとすると、頭に脈打たれるような痛みが走る。



それに…



なんとなく、身体もだるいような。



「気のせいかな…。」




私は制服に着替え、翔太のいるリビングへと向かった。



「沙奈、おはよう。」




「おはよう。」



私の表情を見るなり、翔太は朝ご飯のために調理をしていた手を止めて、私の顎をすくった。



「なあ、沙奈。


今日、4時間目で早退して一緒に病院行こう。」




「えっ?」




「昨日より顔色もよくない。


俺も、今日は午前中だけの外来だから少し抜けて沙奈の診察に付き添うよ。」




「私…。そんなに悪い?」



「沙奈…。



ちょっとそこに座って。」



翔太は、私をソファーに座らせ、隣に座った。




「沙奈。体調が悪いって感じるようになったのはいつぐらいだ?」



「ここ、1か月前くらい。」




「ほんの少しだけだけど、指先も冷たいし顔も白い。


この症状は、循環器独特の疾患を抱える子の所見なんだ。



治療しないと、手遅れになってしまうこともある。


沙奈。昨日も言ったけど俺たちは沙奈を失いたくないんだ。


だから、今日病院に来てくれるか?」





私を見つめる翔太の瞳はまっすぐで、少しだけ潤んでいた。




「分かった。」




ここで診察を受けないと後悔する気がしていた。



翔太の潤んだ瞳から、私の体調は悪化していることを感じ取った。



それもそうだよね。



こうして、歩いたり階段から降りたりすることでさえ苦しい。



次第に、体力も落ちていることが嫌でも分かる。



私の返事を聞いて、安心したかのように翔太は私に優しく微笑んだ。



あまり心配させないように、いつもと変わらない様子で接してくれる翔太。




「朝ごはん。もう少しでできるから待ってて。」




「うん。」




検査の結果を聞いて、私は受け止めきれるだろうか。




怖くて逃げ出してしまうのではないか。




その2つの事が頭から離れられなかった。




だけど、私これからも2人と生きていきたい。




治療して病気が治るのであれば、 頑張って治していきたいと思う。




それから、翔太と朝食を済ませてから私は翔太の車に乗せられ学校へとむかった。
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