すてきな天使のいる夜に
あんなこと言われたら、授業に集中なんてできなかった。
気がつくと、4時間目を終えるチャイムがなって、お昼休みに入りザワザワしていた。
「沙奈。お昼食べよう。」
「音羽、ごめん。今日早退するね。」
「えっ?どうしたの?
具合、悪いの?」
音羽と話をしていると、瑛人も私の元へ来た。
「ここ最近の沙奈の様子、ずっとおかしいと思ってた。
だけど、今日の沙奈。
いつもより、顔色があまりよくないよ。」
瑛人に顎を救われ、視線を捉えられていた。
まっすぐな瞳で見つめる瑛人。
そんな瞳で見つめられたら、言い訳なんて出来ない。
だけど
今の私に自分の体調を話す余裕なんてなかった。
何より今以上に2人に心配かけたくなかった。
「ごめん。」
瑛人の手を降ろし、帰る準備を始めた。
「沙奈!」
「瑛人、音羽。
心配かけてごめんね。
だけど、私今は話せない。
ちゃんと分かったら、2人には話すから。」
「沙奈…。」
「分かった。
何かあっても大丈夫なように、いつでも電話出られるようにしておくから。
必ず、躊躇わずに連絡して。
それだけ、約束してから行って。」
「うん。ありがとう、音羽。約束する。」
私は、リュックを手に取り教室を後にした。
保健室で待ってるように、担任の先生から言われてそのまま保健室で翔太が迎えに来るのを待った。
「沙奈ちゃん。何か温かい飲み物でも飲みますか?」
ベッドに横になる私に、話しかけてきたのは保健室の養護教諭である佐々木沙織先生だった。
「ありがとうございます。」
「あんまり、無理したらダメですよ。
お兄さん達に、ちゃんと甘えることはできていますか?」
佐々木先生の言葉に、頷くことも否定もできず何も反応することができなかった。
それでも、それ以上のことを佐々木先生は何も聞いてこなかった。
ただ、何も言わずに私のベッドサイドに椅子と机を持ってきて隣で仕事を淡々と進めていた。
なんだろう。
この人が隣にいても、変に緊張しない。
むしろ温かくて、頭がふわふわしてくる。
「佐々木先生。」
「どうしました?」
「翔太が来るまで、私の手握っていてくれませんか?」
佐々木先生は、何も戸惑うことなく優しい笑みを私に向け、温かくて優しい手を私に重ねてくれた。
すごく
すごく温かいな。
その温かい手を自分の頬に寄せ、気づいたら深い眠りへ落ちて行った。