すてきな天使のいる夜に
ーside 大翔ー
看護師の冨山さんに、次の患者を呼んでもらうように頼んだ。
彼女が、ここに入るまでは数多くいる1人の患者にすぎなかった。
彼女が俺の前に座った様子を確認した時、不意に彼女と視線があった。
真っ直ぐ見つめられるその瞳が、金縛りにあったみたいに身体全身が痺れる感覚を覚えた。
次第に早くなる心臓の鼓動。
綺麗な瞳で真っ直ぐ見つめられ、体温が次第に上がっていく。
今までに感じたことの無い胸のざわつきを覚えた。
年齢の割に大人びた容姿。
背中まで伸びたブラウンベージュの柔らかく癖のない綺麗な髪。
華奢で可憐な姿に思わず息を呑み込んだ。
冷静さを保っていないと、完全に理性を持っていかれそうで怖かった。
真っ直ぐ見つめる潤んだ瞳。
だけど
その瞳は、どこか冷たく寂しそうで…。
必死に苦しみながらも、頑張って生きているようなそんな瞳をしていた。
彼女の独特な雰囲気が俺の心をかき乱し、医師としての冷静さを失わさせた。
こんなに綺麗な子が、翔太と紫苑の妹なんだよな。
「あの、大翔先輩。
沙奈は、もしかして…。」
「翔太が、思ってる病気そのものだと思う。
気管支喘息。
それから、洞不全症候群になる前の段階。
沙奈ちゃんの心臓の動きは人よりもゆっくりな動きをしているんだ。
エコーの検査で心臓の形や大きさを調べてみたけど、心肥大はしてない。
原因は分からないけど、これからは定期的に心臓と喘息の治療を行っていこう。」
沙奈ちゃんは、俺の言葉に俯いてしまった。
「あの…。
洞不全症候群って、ペースメーカーとか必要になって来るんですか?」
「幸い、沙奈ちゃんの心電図を見るとまだペースメーカーの適応ではないと思ってる。
さすがに、心拍数が50以下になる日が続くのであれば適応になる。
まだ、50~60代は保てているから大丈夫。」
「あの…。」
ずっと口を閉じていた沙奈が、再び顔をあげてまっすぐ俺を見つめてきた。
心臓が飛び出そうなくらい、心臓の鼓動が加速していった。
身体中が熱くなっていくのが分かる。
思わず、医師としての冷静さを失うのではないか。
内心ヒヤヒヤしている。
「どうしたの?」
そう言葉にするのが必死だった。
この気持ちが気づかれないか、隠すのに精一杯だった。
彼女の綺麗な瞳に吸い込まれそうだった。
「私、お母さんの遺伝。受け継いだの?
私…死ぬんですか?」
お母さんの遺伝?
「沙奈ちゃん。
お母さんは、なんの病気だったのか覚えてる?」
「私のお母さんは、心臓が弱かった。
ずっと咳もしてたみたいで、喘息を持ってたみたいなの。」
「気管支喘息は、もしかしたら遺伝かもしれないな。
心臓が弱いっていうのは、よく分からないけどもしかしたら遺伝の可能性も否定はできないかな。」
洞不全症候群は、遺伝や基礎疾患から引き起こされる病気。
MYH6遺伝子の多型が、洞不全症候群を引き起こすリスクとして高いと論文で読んだことがある。
基礎疾患が否定されて、洞不全症候群の前段階っていうことは、必ずしも遺伝ではないって言い切れないだろう。
それに、沙奈ちゃんの年齢でこの病気にかかるのは稀で珍しい。
「そう…ですか。」
そう言葉にすると、沙奈ちゃんは自分の荷物を手に持ち、自分の気持ちを隠すように診察室を後にした。
「沙奈…。」
看護師の冨山さんに、次の患者を呼んでもらうように頼んだ。
彼女が、ここに入るまでは数多くいる1人の患者にすぎなかった。
彼女が俺の前に座った様子を確認した時、不意に彼女と視線があった。
真っ直ぐ見つめられるその瞳が、金縛りにあったみたいに身体全身が痺れる感覚を覚えた。
次第に早くなる心臓の鼓動。
綺麗な瞳で真っ直ぐ見つめられ、体温が次第に上がっていく。
今までに感じたことの無い胸のざわつきを覚えた。
年齢の割に大人びた容姿。
背中まで伸びたブラウンベージュの柔らかく癖のない綺麗な髪。
華奢で可憐な姿に思わず息を呑み込んだ。
冷静さを保っていないと、完全に理性を持っていかれそうで怖かった。
真っ直ぐ見つめる潤んだ瞳。
だけど
その瞳は、どこか冷たく寂しそうで…。
必死に苦しみながらも、頑張って生きているようなそんな瞳をしていた。
彼女の独特な雰囲気が俺の心をかき乱し、医師としての冷静さを失わさせた。
こんなに綺麗な子が、翔太と紫苑の妹なんだよな。
「あの、大翔先輩。
沙奈は、もしかして…。」
「翔太が、思ってる病気そのものだと思う。
気管支喘息。
それから、洞不全症候群になる前の段階。
沙奈ちゃんの心臓の動きは人よりもゆっくりな動きをしているんだ。
エコーの検査で心臓の形や大きさを調べてみたけど、心肥大はしてない。
原因は分からないけど、これからは定期的に心臓と喘息の治療を行っていこう。」
沙奈ちゃんは、俺の言葉に俯いてしまった。
「あの…。
洞不全症候群って、ペースメーカーとか必要になって来るんですか?」
「幸い、沙奈ちゃんの心電図を見るとまだペースメーカーの適応ではないと思ってる。
さすがに、心拍数が50以下になる日が続くのであれば適応になる。
まだ、50~60代は保てているから大丈夫。」
「あの…。」
ずっと口を閉じていた沙奈が、再び顔をあげてまっすぐ俺を見つめてきた。
心臓が飛び出そうなくらい、心臓の鼓動が加速していった。
身体中が熱くなっていくのが分かる。
思わず、医師としての冷静さを失うのではないか。
内心ヒヤヒヤしている。
「どうしたの?」
そう言葉にするのが必死だった。
この気持ちが気づかれないか、隠すのに精一杯だった。
彼女の綺麗な瞳に吸い込まれそうだった。
「私、お母さんの遺伝。受け継いだの?
私…死ぬんですか?」
お母さんの遺伝?
「沙奈ちゃん。
お母さんは、なんの病気だったのか覚えてる?」
「私のお母さんは、心臓が弱かった。
ずっと咳もしてたみたいで、喘息を持ってたみたいなの。」
「気管支喘息は、もしかしたら遺伝かもしれないな。
心臓が弱いっていうのは、よく分からないけどもしかしたら遺伝の可能性も否定はできないかな。」
洞不全症候群は、遺伝や基礎疾患から引き起こされる病気。
MYH6遺伝子の多型が、洞不全症候群を引き起こすリスクとして高いと論文で読んだことがある。
基礎疾患が否定されて、洞不全症候群の前段階っていうことは、必ずしも遺伝ではないって言い切れないだろう。
それに、沙奈ちゃんの年齢でこの病気にかかるのは稀で珍しい。
「そう…ですか。」
そう言葉にすると、沙奈ちゃんは自分の荷物を手に持ち、自分の気持ちを隠すように診察室を後にした。
「沙奈…。」