すてきな天使のいる夜に
ーside 翔太ー



今まで、病気なんてして来なかった人にとって、突然病気の診断を受けたら冷静でいられる人なんていないよな。



沙奈は、ずっと体調が悪いことを我慢していたのか。




もう少し、俺たちを頼ってくれていいのに。




沙奈は、幼い頃から必要以上に人に気を遣い、自分のことはいつも後回しにしていた。




後回しにしたツケが回ってくることもあって、沙奈自身傷ついてしまうことも多くあった。




だからこそ、沙奈には自分のことを大切にしてほしいと願わない日はなかった。




大翔先輩の言うことから、沙奈は今治療が必要で、本当は入院が必要なくらい状態が芳しくないということが分かった。




本当は、結果を見る限り、入院して治療していく必要があるけど、家に俺と紫苑がいるから入院はしない方向になったんだと思う。



今はできることをしよう。




沙奈の体調の変化に気づけるようになるべく沙奈のそばにいて沙奈を支えていこう。




「大翔先輩、ありがとうございました。」




「いや。いいんだ。


沙奈ちゃんに、お大事にって伝えてもらってもいいかな。


無理はしないようにって。」





「分かりました。」




大翔先輩に頭を下げて、診察室を後にした。




「沙奈?」



待合室を見渡してみるが、沙奈の姿がなかった。





嘘…だろう?




「沙奈!?」




「翔太?どうかしたか?」




俺の声と異変に気がついて、大翔先輩が診察室から出てきてくれた。





「それが、沙奈がいなくなってしまって。」





沙奈がいなくなってしまったことに、完全に冷静さを見失っていた。




「大翔先輩、沙奈が!」




「落ち着いて。翔太。


深呼吸だ。」



大翔先輩の言う通りに、深呼吸してみる。




「沙奈ちゃんは、必ず見つかる。



沙奈ちゃんが行きそうな所はないか?



好きな場所とか。」




沙奈のよく行くところ。




考えてみる限り、いつもギターの練習場として使っている海岸しか思いつかなかった。




「海岸かもしれないです。」




「そうか。それなら、一緒に向かおう。」





「だけど、大翔先輩はまだ診察があるんじゃ…。」




「診察はもう落ち着いたから大丈夫。


あとは、沙奈ちゃんの事を記録に残すだけだから。


冨山さん、ちょっとだけここをお願いしてもいいかな?


すぐに戻る。」




大翔先輩は、診察室の後片付けを冨山看護師にお願いし、一緒に沙奈を探してくれた。
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