すてきな天使のいる夜に
♯2 追想
ーside 紫苑ー
半分残ったけど、沙奈が少しでもお粥をたべられて安心した。
ご飯を食べてから、沙奈は再び眠りについていた。
よく眠る沙奈を見て、安心したけど今まで受験勉強やら体調不良のことで眠れてなかったのかと思うと、やはり沙奈は今でも辛いことは話さず自分の中へ溜め込んでしまうということが心配になった。
「沙奈は、頑張りすぎなんだよ。」
思わず、心の声が漏れ気づいたら沙奈の頬に触れていた。
だけど、眠っている沙奈には俺の言葉は届いていない。
沙奈が起きてたら、また自分を責めてしまうところだった。
小さい体から、痛いほど伝わる悲しみや苦しみ。
それでも、あの日よりかは少しずつ自分を取り戻し話してくれるようにはなった。
今でも、沙奈との出会いは忘れられない。
沙奈と出会ったのは、今から5年前のこと。
あの日の出来事は忘れてはいけない。
あの日は、その年で1番冷えると言われていた寒さの厳しい冬の夜のこと。
雪も降っていて、少し外を歩くだけでも耳や指先がちぎれそうで、冷たい風が肌に突き刺すように痛かった。
大学の授業が終わり、いつもの帰り道を歩いていると今にも命の灯火が消えて無くなってしまいそうな女の子を発見した。
その女の子は、ゴミ置き場で半分意識を失いながら、小さく膝を抱え座り込んでいた。
遠目から沙奈を見た時、小学1年生くらいの小さな女の子に見えた。
その子の身体は、氷のように冷たく顔も指先も口唇も青白くなっていた。
その子の吐く白い吐息を見て、生きていることは確認できる。
「君、大丈夫?」
俺の言葉に、返事をすることなくただ曇った瞳で俺を見ていた。
その瞳は、子供の瞳ではなかった。
感情を失い、子供としての無邪気さや活気も全くなかった。
よくよく見ると、容姿や表情は大人に近く、また体も思春期を迎えているということが分かった。
「君、お名前は?」
耳が聞こえないのだろうか…
いや、そんなことよりも…
持ち歩いていたブランケットを彼女に掛け、少しでも体温の下がりが最小限になるように身体を摩り、小さい身体を抱きかかえ近くの病院へと走って向かった。
彼女を、病院へ連れて行ってから治療が終わるまで待っていた。
「あなた、もしかして医療従事者ですか?」
沙奈の治療をした医師にそう尋ねられた。
「いえ。違います。」
「そうか。君がこの子の状態を正確に伝えてくれたこと、ここに来るまでに体温の下がりを最小限に留めてくれていたからてっきり医療従事者かと思った。
それに、何より少しでも見つけるのが遅くなっていたら、彼女は命を落としていたかもしれない。」
「そうですよね。
早めに見つけることが出来てよかった。
それで、彼女の両親には連絡してるのですか?」
「今、警察に急いで身寄りの確認を行っている。
彼女が発見された状況が状況だからな…。」
そう言葉にすると、その医師は険しい表情をしていた。
「ここはもう大丈夫だから、君は帰りなさい。」
医師にそう伝えられたけど、帰りたくなかった。
帰ってしまうと、一生後悔する気がした。
それに、彼女のことがどうしても放っておくことが出来ない。
「いえ。ここにいます。
この子が目を覚ますまでここにいさせてください。」
目が覚めた時に1人で見知らぬ場所にいたら、怖くてたまらないだろう。
きっとまだ、小学生だよな。
目を覚ますまで、彼女の両親が来るまではここで待ちたい。
「見ず知らずの子なんだろう?
君がそこまでする必要はないよ。
後は、私たちに任せて…」
たしかに、そうかもしれない。
赤の他人だけど…
「それでも、俺はこの子のそばにいたい。
お願いします。」
ただ今は、彼女のそばにいたい。
冷えきったこの手を、離してはいけない気がする。
どうしちゃったんだよ俺…。
なんでこんなに必死になっているんだ?
だけど、どうしても気になる。
曇った瞳で俺を見る少女。
身体中にある傷や痣、火傷の跡。
冷たく冷えきった手は、どこか誰かの愛情を求めているようだった。
曇った瞳の奥底からは、抱えきれないほどの悲しみや寂しさが伝わってくる。
この子を、1人にしたくない。
何があったのか分からないけど、もし…
この全身の傷が、親からの暴力だとしたら…
誰も信用出来なくなってしまったのなら…
守りたい。
この手で、抱きしめたい。
「分かった…。君がそこまで言うなら。
お家の人には遅くなること伝えておきなさい。」
「ありがとうございます。」
それから、沙奈が目を覚ますまで冷たい手を握りながら沙奈の眠りを見守っていた。
半分残ったけど、沙奈が少しでもお粥をたべられて安心した。
ご飯を食べてから、沙奈は再び眠りについていた。
よく眠る沙奈を見て、安心したけど今まで受験勉強やら体調不良のことで眠れてなかったのかと思うと、やはり沙奈は今でも辛いことは話さず自分の中へ溜め込んでしまうということが心配になった。
「沙奈は、頑張りすぎなんだよ。」
思わず、心の声が漏れ気づいたら沙奈の頬に触れていた。
だけど、眠っている沙奈には俺の言葉は届いていない。
沙奈が起きてたら、また自分を責めてしまうところだった。
小さい体から、痛いほど伝わる悲しみや苦しみ。
それでも、あの日よりかは少しずつ自分を取り戻し話してくれるようにはなった。
今でも、沙奈との出会いは忘れられない。
沙奈と出会ったのは、今から5年前のこと。
あの日の出来事は忘れてはいけない。
あの日は、その年で1番冷えると言われていた寒さの厳しい冬の夜のこと。
雪も降っていて、少し外を歩くだけでも耳や指先がちぎれそうで、冷たい風が肌に突き刺すように痛かった。
大学の授業が終わり、いつもの帰り道を歩いていると今にも命の灯火が消えて無くなってしまいそうな女の子を発見した。
その女の子は、ゴミ置き場で半分意識を失いながら、小さく膝を抱え座り込んでいた。
遠目から沙奈を見た時、小学1年生くらいの小さな女の子に見えた。
その子の身体は、氷のように冷たく顔も指先も口唇も青白くなっていた。
その子の吐く白い吐息を見て、生きていることは確認できる。
「君、大丈夫?」
俺の言葉に、返事をすることなくただ曇った瞳で俺を見ていた。
その瞳は、子供の瞳ではなかった。
感情を失い、子供としての無邪気さや活気も全くなかった。
よくよく見ると、容姿や表情は大人に近く、また体も思春期を迎えているということが分かった。
「君、お名前は?」
耳が聞こえないのだろうか…
いや、そんなことよりも…
持ち歩いていたブランケットを彼女に掛け、少しでも体温の下がりが最小限になるように身体を摩り、小さい身体を抱きかかえ近くの病院へと走って向かった。
彼女を、病院へ連れて行ってから治療が終わるまで待っていた。
「あなた、もしかして医療従事者ですか?」
沙奈の治療をした医師にそう尋ねられた。
「いえ。違います。」
「そうか。君がこの子の状態を正確に伝えてくれたこと、ここに来るまでに体温の下がりを最小限に留めてくれていたからてっきり医療従事者かと思った。
それに、何より少しでも見つけるのが遅くなっていたら、彼女は命を落としていたかもしれない。」
「そうですよね。
早めに見つけることが出来てよかった。
それで、彼女の両親には連絡してるのですか?」
「今、警察に急いで身寄りの確認を行っている。
彼女が発見された状況が状況だからな…。」
そう言葉にすると、その医師は険しい表情をしていた。
「ここはもう大丈夫だから、君は帰りなさい。」
医師にそう伝えられたけど、帰りたくなかった。
帰ってしまうと、一生後悔する気がした。
それに、彼女のことがどうしても放っておくことが出来ない。
「いえ。ここにいます。
この子が目を覚ますまでここにいさせてください。」
目が覚めた時に1人で見知らぬ場所にいたら、怖くてたまらないだろう。
きっとまだ、小学生だよな。
目を覚ますまで、彼女の両親が来るまではここで待ちたい。
「見ず知らずの子なんだろう?
君がそこまでする必要はないよ。
後は、私たちに任せて…」
たしかに、そうかもしれない。
赤の他人だけど…
「それでも、俺はこの子のそばにいたい。
お願いします。」
ただ今は、彼女のそばにいたい。
冷えきったこの手を、離してはいけない気がする。
どうしちゃったんだよ俺…。
なんでこんなに必死になっているんだ?
だけど、どうしても気になる。
曇った瞳で俺を見る少女。
身体中にある傷や痣、火傷の跡。
冷たく冷えきった手は、どこか誰かの愛情を求めているようだった。
曇った瞳の奥底からは、抱えきれないほどの悲しみや寂しさが伝わってくる。
この子を、1人にしたくない。
何があったのか分からないけど、もし…
この全身の傷が、親からの暴力だとしたら…
誰も信用出来なくなってしまったのなら…
守りたい。
この手で、抱きしめたい。
「分かった…。君がそこまで言うなら。
お家の人には遅くなること伝えておきなさい。」
「ありがとうございます。」
それから、沙奈が目を覚ますまで冷たい手を握りながら沙奈の眠りを見守っていた。