すてきな天使のいる夜に
ただでさえ、体調のことを心配しているのに遅くなって帰ってきたら余計に迷惑をかけてしまう。
だけど、私も音羽や瑛人と一緒にご飯を食べたいな。
ずっと入試の勉強を一緒に頑張って来て、息抜きもする間もなく入学式を迎えちゃったんだよね。
「それなら、沙奈の家が大丈夫なら沙奈の家でみんなでご飯食べない?」
「えっ!いいの?」
「うん!沙奈が良ければ。」
「2人とも、お待たせ。」
「瑛人、これから沙奈のお家でご飯食べに行くんだけど一緒に行くよね?」
「え!いいの!?
俺、超嬉しい。」
子供のようにはしゃぐ瑛人を見ながら私は1番上の兄に電話をしようとポケットに入っていた携帯を取り出した。
「一応、紫苑に電話してみるね。」
それから、私はすぐに紫苑に電話をかけた。
ずっと携帯を持っていたのか、紫苑はワンコールで電話に出てくれた。
「沙奈。お前大丈夫だったのか?」
「えっ?」
「えっ?じゃないだろ。今日、病院に来いってあれだけ言ったのに。来なかっただろう。」
「ごめん。部活見学があったから。」
「そうか…。今日は入学式とかで疲れたよな。
沙奈。何かあったから連絡したんだろう?」
「今から、帰るんだけど音羽と瑛人も家でご飯食べてもいいかなって。」
「大丈夫だよ。今日は翔太と2人で沙奈のお祝いパーティをしようかって話してたんだ。
だから、翔太にも俺から連絡いれておくね。」
「紫苑。ありがとう。」
「いいんだよ。それより、気をつけて帰るんだよ。」
「うん、ありがとう。」
紫苑との電話を切ってから、私達は家へ向かった。
「ただいまー。」
「「お邪魔します。」」
「瑛人、音羽。いらっしゃい。」
「美味しそうな匂い。」
「今日は沙奈の好きなご飯ばかりだよ。
紫苑も、今病院から出るって言ってたからすぐにこっちに着くと思う。」
「わかった。翔太ありがとう。」
「その笑顔は反則。
今心臓撃ち抜かれた。」
「何言ってるの。」
それから、10分もしない間に紫苑は帰ってきた。
「ただいま。」
「あっ、紫苑おかえり。」
「沙奈も今日はお疲れ様。
音羽も瑛人もいらっしゃい。」
紫苑はそう言いながら、私の頭に手を乗せていた。
「沙奈、ちょっといいか?」
「えっ、今?」
「ああ。ちょっと話したいことがあるから。」
「分かった。」
それから、紫苑は私の手を引き紫苑の部屋へ連れられていた。
「沙奈。今日は咳とか出なかったか?」
「うん。大丈夫だった。」
「ちょっといいか?」
紫苑は、私の胸に耳を寄せ呼吸の音をじっくりと聞いていた。
「うん、今のところは大丈夫だな。」
相変わらず、心配症な紫苑。
「私、そろそろ2人のところに行ってもいい?」
体調が悪いことで、また病院の話が出ることが嫌で紫苑から少しだけ身体を離した。
「あぁ。急に呼んで悪かったな。
だけど、沙奈。
あんまり無理はするなよ。」