すてきな天使のいる夜に
ーSide 翔太ー



沙奈は、小さい頃からよく眠る子だった。



眠る時間があまりにも長くて少し心配な時期もあった。



1週間休んで、久々の学校で疲れたというだけではないということを音羽と沙奈の様子から分かった。



沙奈の目元には、月の光に照らされて涙の後が見えた。



学校で、何かあったのだろうか。



ここ数日で、沙奈には大きな負担がかかって来たからな…。



生活習慣が、ガラッと変わったよな。



「沙奈、起きて。


病院着いたよ。」



沙奈を揺すっても全然起きなかった。



参ったな…。



沙奈を抱き、診察の受付を済ませて待合室で沙奈を横にした。



幸い、夜で人も少ないし沙奈は体も小さいから少しの間ソファー寝かせておいても大丈夫だろう。



自分の膝に沙奈の頭を乗せ髪を撫でながら、沙奈が呼ばれるのを待った。



「翔太、ありがとう。


ごめんな。


沙奈の診察には、俺が付き添うって言ったのに。」



声をかけたのは、まだ仕事中の紫苑だった。




「いいよ。気にいないで。」



紫苑は、俺の隣に腰を降ろした。



「沙奈、相当疲れたんだな。」



「うん。だけど、沙奈に涙の跡が見られたんだ…。

音羽達なら知ってるのかな…。」



「音羽か?」



「沙奈、学校で寝ちゃって瑛人が沙奈を抱えて校門の外まで連れてきてくれたんだ。


その時、音羽も一緒だったんだけど。


車に乗せてから、沙奈の涙の跡が見えたんだ。


だから、きっと病気のことで1人で悩んでいたのかもしれない。


きっと、音羽に話して沙奈も心が少し楽になったんだろうな。


安心して沙奈は涙を流したのかもしれない。」



あくまでも、俺の推測だけど。



もしそうなら、沙奈の心が少しでも軽くなったのであればいいけど。



「そうか。」


紫苑は、それ以上に何も話すことはなかった。


「七瀬沙奈さん。診察室へお入りください。」



看護師から呼ばれ、沙奈を連れ診察の中へ入った。


「沙奈ちゃん。寝ちゃってるんだな。」



沙奈の姿を確認するなり、大翔先輩はそう言い、診察台へ寝かせるように言われそのままゆっくり沙奈を寝かせた。




「呼吸機能検査は、また今度にしよう。」



大翔先輩は、沙奈の診察を進めそれから俺は沙奈の様子を色々と話した。
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