すてきな天使のいる夜に
ーside 沙奈ー



まだ朝日が顔を出す前に目を覚ました。



隣に翔太と、近くの布団で紫苑が寝ていることに気づいた。



携帯で時間を確認すると、まだ4時半だった。



学校から私眠ってたのかな。



体を起こすと、波打つように頭が痛かった。



そうだ、私…。



病気のこと、音羽に話したんだった。



音羽に、話したけど音羽に負担がかからないようにしないとな…。



少し、迷惑をかけてしまうかもしれないから話したけど、本当に話してよかったのか戸惑いがまだ残っていた。



「沙奈…?起きたのか。」



紫苑は、私が起きたことに気づき冷たい水を持ってきてくれた。



「頭、痛いだろう?」



「うん…。」



「沙奈、何か悩んでるなら話してごらん。


なんか、思い詰めた顔してる。」



紫苑や翔太は勘が鋭い。


私は、紫苑が持ってきてくれた水を1口口に含んだ。



「紫苑。


何でもない。大丈夫。」



「大丈夫って表情じゃないだろう。


1人で、何でも抱え込まなくていいんだよ。


何かあったら話して。


沙奈の悩み事は、俺たちの悩みでもあるんだから。」




紫苑の優しい言葉に、涙が出そうになった。



だけど、正直今は起きている事が辛くて体も怠く話すことでさえ辛かった。




「ごめん、沙奈。


明日起きてからにしよう。


今、起きてることでさえ辛いだろ?」



私の仕草を見た紫苑は、私を優しく包み込んでからそう話した。




紫苑は、私の体を横にして優しく布団をかけてくれた。


何でもお見通しの紫苑に助けられている。


そう優しい言葉をかけてくれるけど、どうやって話していいのか分からない。



だけど、紫苑や翔太にはいつもたくさん支えられているし頼っている。



それ以上に、私は2人の優しさに甘えてしまったら、自分が段々と弱くなっていくのではないかと不安な気持ちもあった。




あまり、自分の気持ちを表に出すと呆れられてしまう。



面倒だと思われてしまう。



嫌われてしまう。



そんなことばかり考えて、私は話すことも誰かと必要以上に関わりをもつことが嫌いだった。



信頼した人に、裏切られたり見捨てられたりすることが怖い。



それなら、最初から関係は持たない方が良い。



ずっと、そうやって生きてきたのだから。



幼なじみの音羽や瑛人にでさえも、深く関わっていくことが怖い。



全てを話すこと、心を許すことが怖かった。



紫苑や翔太よりも、長い期間を一緒に過ごしてきた2人に対してもそんな感じだから、紫苑や翔太へ話すこともまだ慣れることはできないと思っていた。
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