すてきな天使のいる夜に
「沙奈、大丈夫か?」
窓の外を眺めていると、まだ白衣を身にまとった紫苑は、椅子を私のベッドサイドに近づけてから腰を降ろした。
「うん。酸素の量も減ってきたから大丈夫。
それより、紫苑。
まだ仕事中じゃないの?」
「沙奈の顔を早く見たくて、仕事終わってまっすぐこっちに来たんだ。」
「ありがとう。」
「沙奈…。
リハビリはどうだ?
今日から始まったって安住さんから聞いたけど。」
午後に、リハビリ担当の西条さんと一緒に体力を戻すため少しずつ歩いたりした。
「うん。まだ、手すりがないと辛いけど、歩けるよ。
だけど、すぐ息切れしちゃって…。」
「そうか。
最初から焦らなくていいから、ゆっくり体力を戻していこうな。」
紫苑は、そう言って私の髪を整えるように撫でた。
「沙奈は、運動神経がいいからすぐに慣れると思う。」
「うん。
私、早く帰れるように頑張る。」
「沙奈は、頑張りすぎる所があるから無理はするなよ。
無理にリハビリやってたりしたらすぐに止めるけどな。」
無理はしないけど、私も早く家へ帰りたいからリハビリと治療を頑張っていかないとな。
翔太や、紫苑のいる家へ早く帰りたい。
温かくて、優しい2人のいる家が私の帰る場所。
「沙奈、お見舞いに来たぞ。」
紫苑と話をしていると、翔太がお見舞いに来てくれた。
「沙奈、調子はどう?大丈夫か?」
「うん。大丈夫。」
「顔色も、ずいぶん良くなってきたな。
安心したよ。」
「沙奈、だいぶ体力が落ちてきたから今日からリハビリ始まったんだ。
手すりを使いながら、歩くことができているよ。」
「そうか。よかった。
だけど、無理はするなよ。
辛かったら、すぐに言っていいんだからな。」
翔太も、紫苑と同じように私の事を心配してくれる。
さっき紫苑も同じこと言ってたね。
久々に3人で過ごす夜の時間が、すごく心地がよかった。
紫苑と翔太は、今日私に付き添ってくれるみたいで、泊まる準備も持ってきていた。
2人の温もりに包まれながら、私は深い眠りに落ちていた。