すてきな天使のいる夜に
ーside 冨山ー
沙奈から、過去を知りたいと言われた時は絶対に話してはいけないと感じた。
そうでなくても、沙奈は何でも自分で抱え込み解決しようとしてしまう子だったから。
誰かに頼ること、甘えること。
それは誰しもが、親子の関係の中でできること。
あの父親のせいで、沙奈は誰かに頼ったり甘えることをせずここまで成長してしまった。
沙奈の父親は、本当に酷かった。
沙奈に感情を表に出すなと言ったり、自分の意思で物を言うなと言ったりと本当に理不尽だった。
沙奈の父親の荒らげた声が、よく俺の家まで聞こえていた。
あの罵声は、大人でさえも気が滅入り聞くに耐え難いものだった。
そんな罵声を多く浴びせられてきたから、沙奈の感情は希薄になってしまった。
人はきっと、親との信頼関係を基盤にして親に頼ったり甘えたりしながら成長し、社会にでてからもそれを元にしながら人間関係を築くことができていると思う。
子供の頃に確立されるものが確立されなかったから余計だと思うんだ。
きっと沙奈は、父親から色んな物を抑え込まれてきたから頼り方が分からなくなってしまったんだと思う。
あるいは、頼ってはいけないと感じていると思う。
「沙奈。
本当は、もっと早くに俺が沙奈を引き取ることができればあの日沙奈は辛い思いをしなくて済んだかもしれないんだ。」
そう。
沙奈の父親が沙奈を迎えに来た時、表面上はきちんとした格好をしていたけど中身は何も変わっていないと感じていたんだ。
だから、あの時俺がもっと強く止められていたら沙奈の人生はもっと明るい方へ変わっていたのかもしれない。
だけど、まだ未成年だったから俺がいくら主張した所で、事は何も変えることは出来ないと諦めてしまった。
ずっと後悔していた。
あの日の出来事が起こる前から。
俺の家まで響き渡る沙奈への罵声を聞きながら、俺や俺の親は何度も沙奈を連れ戻そうと試みた。
でも、案の定それは受け入れて貰えなくて暴力を振られたりなど、前よりもっと手に負えない状態になっていたんだ。
だから、沙奈の父親に近づくことが怖かったという気持ちもあったのかもしれない。
ごめんな、沙奈。
沙奈の心に深い傷を残してしまって。
父親の元へ返してしまって。
まだ、子供だった沙奈を守ることができなくて。
ごめんな。
ごめんな。こんなに弱い俺で。
だから、沙奈をこの病院で見かけて七瀬先生兄弟に引き取られた事を聞いた時も、少し寂しい気持ちと、やり切れない思いがあった。
1番身近にいた俺が、何も出来なかったのに赤の他人であるあの2人が沙奈と一緒に暮らしていたから。
家族になっていたから。
何も出来なかったという現実を突きつけられているようだったから。
でも、それは誰のせいでもない。
俺の責任と覚悟が甘かったから仕方の無いことだ。
そう思う他、仕方がなかった。
「冨山さんは、悪くない。
私が悪いの。いい子じゃなかったから…。
だから、自分を責めないで。」
沙奈は、優しい表情でずっと後悔していた俺にそう微笑んでくれた。
だけど、沙奈。
お前は小さい頃から、心が誰よりも綺麗で本当にいい子なんだよ。
あの父親の元にいたのに、沙奈は染まることがなかっただろう。
沙奈はいつも自分に悲劇が起ころうとも誰かの所為にはしない。
だけど、あの父親の元から離れ沙奈が選んだ場所でなら沙奈は変わることができるような気がしていた。
きっと、いい方向へ。
だから俺は、これからも沙奈を見守りながら支えていこうと思うんだ。
あの日、何も出来なかった。
この事実は変えることはできない。
だけど、今は自分にできることがあるはず。
あの時の俺は、何もできなかったけど今は看護師という仕事を手につけ責任のある大人になることができた。
沙奈が幸せになるためなら、俺もできる限りのことはしていきたいと沙奈と再会してからずっと思っていたんだ。
沙奈から、過去を知りたいと言われた時は絶対に話してはいけないと感じた。
そうでなくても、沙奈は何でも自分で抱え込み解決しようとしてしまう子だったから。
誰かに頼ること、甘えること。
それは誰しもが、親子の関係の中でできること。
あの父親のせいで、沙奈は誰かに頼ったり甘えることをせずここまで成長してしまった。
沙奈の父親は、本当に酷かった。
沙奈に感情を表に出すなと言ったり、自分の意思で物を言うなと言ったりと本当に理不尽だった。
沙奈の父親の荒らげた声が、よく俺の家まで聞こえていた。
あの罵声は、大人でさえも気が滅入り聞くに耐え難いものだった。
そんな罵声を多く浴びせられてきたから、沙奈の感情は希薄になってしまった。
人はきっと、親との信頼関係を基盤にして親に頼ったり甘えたりしながら成長し、社会にでてからもそれを元にしながら人間関係を築くことができていると思う。
子供の頃に確立されるものが確立されなかったから余計だと思うんだ。
きっと沙奈は、父親から色んな物を抑え込まれてきたから頼り方が分からなくなってしまったんだと思う。
あるいは、頼ってはいけないと感じていると思う。
「沙奈。
本当は、もっと早くに俺が沙奈を引き取ることができればあの日沙奈は辛い思いをしなくて済んだかもしれないんだ。」
そう。
沙奈の父親が沙奈を迎えに来た時、表面上はきちんとした格好をしていたけど中身は何も変わっていないと感じていたんだ。
だから、あの時俺がもっと強く止められていたら沙奈の人生はもっと明るい方へ変わっていたのかもしれない。
だけど、まだ未成年だったから俺がいくら主張した所で、事は何も変えることは出来ないと諦めてしまった。
ずっと後悔していた。
あの日の出来事が起こる前から。
俺の家まで響き渡る沙奈への罵声を聞きながら、俺や俺の親は何度も沙奈を連れ戻そうと試みた。
でも、案の定それは受け入れて貰えなくて暴力を振られたりなど、前よりもっと手に負えない状態になっていたんだ。
だから、沙奈の父親に近づくことが怖かったという気持ちもあったのかもしれない。
ごめんな、沙奈。
沙奈の心に深い傷を残してしまって。
父親の元へ返してしまって。
まだ、子供だった沙奈を守ることができなくて。
ごめんな。
ごめんな。こんなに弱い俺で。
だから、沙奈をこの病院で見かけて七瀬先生兄弟に引き取られた事を聞いた時も、少し寂しい気持ちと、やり切れない思いがあった。
1番身近にいた俺が、何も出来なかったのに赤の他人であるあの2人が沙奈と一緒に暮らしていたから。
家族になっていたから。
何も出来なかったという現実を突きつけられているようだったから。
でも、それは誰のせいでもない。
俺の責任と覚悟が甘かったから仕方の無いことだ。
そう思う他、仕方がなかった。
「冨山さんは、悪くない。
私が悪いの。いい子じゃなかったから…。
だから、自分を責めないで。」
沙奈は、優しい表情でずっと後悔していた俺にそう微笑んでくれた。
だけど、沙奈。
お前は小さい頃から、心が誰よりも綺麗で本当にいい子なんだよ。
あの父親の元にいたのに、沙奈は染まることがなかっただろう。
沙奈はいつも自分に悲劇が起ころうとも誰かの所為にはしない。
だけど、あの父親の元から離れ沙奈が選んだ場所でなら沙奈は変わることができるような気がしていた。
きっと、いい方向へ。
だから俺は、これからも沙奈を見守りながら支えていこうと思うんだ。
あの日、何も出来なかった。
この事実は変えることはできない。
だけど、今は自分にできることがあるはず。
あの時の俺は、何もできなかったけど今は看護師という仕事を手につけ責任のある大人になることができた。
沙奈が幸せになるためなら、俺もできる限りのことはしていきたいと沙奈と再会してからずっと思っていたんだ。