すてきな天使のいる夜に
ーside 沙奈ー



あれから、あまりよく眠ることができなかった。



紫苑が、いつも以上に心配してるということはきっと私が何かの病気かもしれないということなんだろうか。




あんなに心配する紫苑は初めてで、風邪を引いた時も心配はしてくれてはいたけど。



あんな深刻な表情を見たら、不安になる。



それから私は、ちゃんと2人と話ができず学校に向かっていた。




朝のホームルームで、担任の先生から突然名前を呼ばれた。





「七瀬さん。ちょっとお話したいことがあるからホームルームが終わった後保健室に行ってね。」




保健室?



なんだろう。そんなに私、顔色が悪いのかな。




ホームルームが終わってから、私は重い足取りで保健室へと向かった。




保健室に行くと、深刻な顔をしている保健室の先生と担任がいた。





テーブルの上に置いてあった青い封筒と病院の名前が書いてある白い封筒を見て察した。



3月の健康診断で何かが見つかった。



そう言うために私を呼んだんでしょ?



私は、封筒を手に取りその場から去ろうとすると



「七瀬さん、ちょっと待って下さい。」



保健室の先生に手首を掴まれた。



私はその手を振り払った。



薄々、予想はできていた。


だから、今のうち覚悟はしないとってここに来るまで思っていた。



あんなに紫苑が深刻な顔をしていたんだから。



この苦しさも、時々出る痰が絡んだような咳もただの風邪じゃないことくらい分かったから。



「七瀬さん、少し詳しく話をさせて下さい。」



「何をですか?」



詳しく話をすることなんて何も無い。



ここに病気である現実があって、それを受け止めなければいけない。



この現実を変えることなんてできないのに、何を話すって言うの?




「詳しいことは結果がでないと分からないけど…」



「すみません…。これ以上、話すことはありません。失礼します。」



先生はまだ何かを続けようとしたけど何も聞きたくなかった私は言葉を遮っていた。



保健室を出てから教室には戻りたくなくて屋上へと向かった。



教室に入ると、絶対動揺する。



みんなに心配かける。



屋上に行くと、封筒を開けようか迷った。



正直、この封筒を開けるのが怖い。



手が震えて力が入らない。



弱いな、私…。



何となく、予想はしてる。



覚悟もしていたつもりだったのに…。



きっと私、お母さんの遺伝を受け継いだんだ。



って!だめ。私が弱くなってどうするの!



ちゃんと、結果を見ないとダメだよね。



封筒を家で開けて、動揺してたら紫苑と翔太が余計に心配する。



開けるなら、今しかないよね。



覚悟を決めて封筒の封を切る。



恐る恐る中を確認すると予感的中。



「やっぱり…」



『呼吸器系、循環器系に異常が診られます』



そう記された私の検査結果。



しばらくここから動けなくなった。



空を眺め、流れゆく雲の数を数えていると、1時間目の予鈴が聞こえてようやく我に戻った。


授業は受けなきゃ。



封筒を制服の中に隠し持ち教室に戻った。
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