すてきな天使のいる夜に
ーside 紫苑ー
大翔が、沙奈と関わっている様子を見ていると、いつも安心して沙奈を任せることができる。
だからこそ、俺は大翔になら沙奈のことを話すことができる。
沙奈を、託すことも。
いつかは兄として覚悟を決めないといけないと思ってはいたけど、こんなに早く来るとは思っていなかった。
そうは言っても、沙奈はまだ未成年だし高校生だから家から送り出すことは先だけど。
それもすぐ、あっという間に時が流れて沙奈を大翔の元へ引き渡す日が来るんだろうな…。
だけど、沙奈が俺たちの元から巣立ったとしても沙奈はこれからも俺達の妹であることには変わりないけど。
それよりも。
沙奈の過去は、俺や翔太も知らない。
あの日、何があったのか沙奈自身から聞かないといけないよな。
今の沙奈を見ていると、またいつ過呼吸を起こすか分からない。
いくら辛くても、苦しくても沙奈が自分の力で過去から自分を解放してあげない限りは、ずっと沙奈は苦しみを抱えながら生きていかないといけなくなる。
喘息患者にとって、過呼吸を引き起こしてしまうと命を失うことだってある。
だから、いつか沙奈も過去を乗り越えて行かなければずっと沙奈はこのままだよな。
このまま、過去にあった悲しみを抱えながら生きていくことは俺自身も、どうにかしてあげたいと思う。
さっきは、大翔に時期尚早とか言ってしまったけど、喘息のコントロールが出来ている今沙奈から聞いた方がいいのかもしれない。
そんなことを考えていると、沙奈は目を覚ました。
「沙奈。起きた?」
「うん。紫苑、大翔先生は?」
「今日はもう帰ったよ。
これから、会議が病院であるみたいだから。」
「紫苑は、行かなくても大丈夫?」
「うん。俺は違う科だから関係ないんだ。」
「そっか。」
「なあ、沙奈。
話を聞いてもいいかな?」
「何?」
沙奈は、そう言って体を半分起こした。
俺も沙奈の隣に座り、沙奈に過去に何があったのか聞くことを心に決めた。
「沙奈。
いつかは、沙奈に聞こうと思っていたんだ。
というよりも、聞かなければいけないと思っていた。
話せる範囲でいい。
5年前の2月18日。
何があったんだ?」
もしかしたら、過呼吸や喘息の発作を引き起こす可能性がある。
すぐに処置ができるように、手元には準備をしていた。
「どうして…
なんで、そんなことを聞くの?」
潤んだ瞳で、沙奈は俺を見つめた。
「沙奈、ちょっとこっちにおいで。」
俺のその一言を聞いて、明らかに沙奈は涙目になったことが分かった。
きっと何か、変な勘違いをしているのだろうか。
不安に感じてしまったのだろうか。
そんな表情をしていた。
俺はそんな沙奈の肩を、自分へ引き寄せた。
「もしかして、沙奈。
過去のことを話したら、俺が沙奈から離れるとか思ってる?
それとも、まだ過去のことをあまり覚えていないか?」
少しずつ熱くなる沙奈の体温。
きっと、どっちかが当てはまっているのだろうか。
沙奈はゆっくり、口を開いた。
「私、あの日のことははじめて過呼吸が出た日に全部夢の中で思い出したの。
話すことも、できると思ってる。
でも、きっと全部話したら紫苑は私を見ることができなくなると思う。
可哀想な子っていう目で見られるのは嫌なの。
紫苑や翔太からたくさん普通の女の子がしてもらってるようなことをしてくれた。
普通の女の子として接してくれた。
同情の目じゃなかったから、私は信じることができた。」
大翔が、沙奈と関わっている様子を見ていると、いつも安心して沙奈を任せることができる。
だからこそ、俺は大翔になら沙奈のことを話すことができる。
沙奈を、託すことも。
いつかは兄として覚悟を決めないといけないと思ってはいたけど、こんなに早く来るとは思っていなかった。
そうは言っても、沙奈はまだ未成年だし高校生だから家から送り出すことは先だけど。
それもすぐ、あっという間に時が流れて沙奈を大翔の元へ引き渡す日が来るんだろうな…。
だけど、沙奈が俺たちの元から巣立ったとしても沙奈はこれからも俺達の妹であることには変わりないけど。
それよりも。
沙奈の過去は、俺や翔太も知らない。
あの日、何があったのか沙奈自身から聞かないといけないよな。
今の沙奈を見ていると、またいつ過呼吸を起こすか分からない。
いくら辛くても、苦しくても沙奈が自分の力で過去から自分を解放してあげない限りは、ずっと沙奈は苦しみを抱えながら生きていかないといけなくなる。
喘息患者にとって、過呼吸を引き起こしてしまうと命を失うことだってある。
だから、いつか沙奈も過去を乗り越えて行かなければずっと沙奈はこのままだよな。
このまま、過去にあった悲しみを抱えながら生きていくことは俺自身も、どうにかしてあげたいと思う。
さっきは、大翔に時期尚早とか言ってしまったけど、喘息のコントロールが出来ている今沙奈から聞いた方がいいのかもしれない。
そんなことを考えていると、沙奈は目を覚ました。
「沙奈。起きた?」
「うん。紫苑、大翔先生は?」
「今日はもう帰ったよ。
これから、会議が病院であるみたいだから。」
「紫苑は、行かなくても大丈夫?」
「うん。俺は違う科だから関係ないんだ。」
「そっか。」
「なあ、沙奈。
話を聞いてもいいかな?」
「何?」
沙奈は、そう言って体を半分起こした。
俺も沙奈の隣に座り、沙奈に過去に何があったのか聞くことを心に決めた。
「沙奈。
いつかは、沙奈に聞こうと思っていたんだ。
というよりも、聞かなければいけないと思っていた。
話せる範囲でいい。
5年前の2月18日。
何があったんだ?」
もしかしたら、過呼吸や喘息の発作を引き起こす可能性がある。
すぐに処置ができるように、手元には準備をしていた。
「どうして…
なんで、そんなことを聞くの?」
潤んだ瞳で、沙奈は俺を見つめた。
「沙奈、ちょっとこっちにおいで。」
俺のその一言を聞いて、明らかに沙奈は涙目になったことが分かった。
きっと何か、変な勘違いをしているのだろうか。
不安に感じてしまったのだろうか。
そんな表情をしていた。
俺はそんな沙奈の肩を、自分へ引き寄せた。
「もしかして、沙奈。
過去のことを話したら、俺が沙奈から離れるとか思ってる?
それとも、まだ過去のことをあまり覚えていないか?」
少しずつ熱くなる沙奈の体温。
きっと、どっちかが当てはまっているのだろうか。
沙奈はゆっくり、口を開いた。
「私、あの日のことははじめて過呼吸が出た日に全部夢の中で思い出したの。
話すことも、できると思ってる。
でも、きっと全部話したら紫苑は私を見ることができなくなると思う。
可哀想な子っていう目で見られるのは嫌なの。
紫苑や翔太からたくさん普通の女の子がしてもらってるようなことをしてくれた。
普通の女の子として接してくれた。
同情の目じゃなかったから、私は信じることができた。」