地味で根暗で電信柱な私だけど、あなたを信じていいですか?
 ふわっと長野ちゃんの甘い柑橘系の匂いがアルコールの臭いと混ざりながら私を包む。彼女の息がうなじをくすぐった。温かな体温がとくとくとくという心音とともに伝わってくる。

「実は見ちゃったんですよぉ」
「み、見ちゃったって、何を?」

 今日ずっと長野ちゃんにため息をつかせていた原因はこれか。

 半ば確信しつつ、それでも聞いてはいけないと警告する自分がいて、どちらにも転びきれないまま私は長野ちゃんの背中に腕を回した。

「佐藤さん、女の子と歩いてたんですよぅ。それもすっごい可愛い子でぇ。私ほどじゃないけど可愛い子でぇ」
「……」

 長野ちゃん。

 あんまり自分のこと可愛いって強調しないほうがいいよ。

 ……じゃなくて!
 
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