地味で根暗で電信柱な私だけど、あなたを信じていいですか?
 長野ちゃんの話によると昨夜彼氏と食事をして帰る途中で佐藤さんたちを見かけたのだそうだ。

 そういえば昨夜の佐藤さんは帰りが遅かった。

 飲み会があったと聞いてはいたけどよく考えると誰と飲んでいたのかまでは聞いていない。忘年会の類だろうとスルーしてしまったのだ。

 だって営業なら飲み付き合いもあるだろうし。

 束縛してくる面倒な女だと思われたくないし。

 長野ちゃんの話を聞いて私はすっかり酔いが醒めてしまった。

 すぐにでも真偽を確認したかったのだが、佐藤さんに重い女だと思われたくない気弱な私が連絡するのを思い止まらせていた。

 スマホを出しては画面を見つめ、仕舞ってはまた取り出すを繰り返しているうちに一次会は終わってしまった。

 もう忘年会という気分ではなかったものの帰ったところで佐藤さんはいないとわかっていたので二次会に出ることにした。だって誰もいない家に一人で待っていなければならないなんて寂しいじゃない。

 でも、本当に長野ちゃんが見た人って佐藤さんなのかな。

 一次会の会場だったおソバ屋さんを後にしながら私はそう思うのであった。
 
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