夢みたもの
「あらあら、残念ね」


葵がニコニコ笑いながら、鞠子の頭をポンポンと叩く。


「鞠子の期待通りにならなくて」

「そうなんだけどさぁ・・・」


鞠子はそう言いながら起き上がると、葵を見てニヤッと笑った。


「実は、そんなにショックでもないんだよねぇ」

「あら そうなの?」


「うん」と大きく頷くと、鞠子は楽しそうに笑う。


「だって、特クラの編入生って時点で、鞠子そんなに興味無いし。でも、情報通の鞠子としては、噂は放って置けないっていうか」

「つまり、ただのミーハーじゃない」

「違うよぉ。鞠子からの情報を期待してるコ達に、ちゃんと教えてあげれるようにしてるんだもん」


「それに・・・」と鞠子は教室内をぐるりと見回すと、航平に視線を止めてニッコリ笑った。


「鞠子の一番は、やっぱり航平君だもん」

「そうなの?」

「それじゃ、さっきからうるさく言ってる賞賛の言葉は、叶君じゃなくて、堤君に向けられたものだったって事?」


あたしと葵が顔を見合わせて、少し驚いてそう言うと、鞠子はフフンと得意気に笑った。


「もちろん!だって、今朝の航平君 超カッコ良かったでしょ!?」


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