夢みたもの
「そう・・・かな?」

「格好良いかは別として、騒ぎを大きくしてくれたのは事実ね」

「もぉ〜、2人とも感動薄すぎ!!」


鞠子は地団駄を踏むように手を大きく動かすと、頬を赤くして航平を見つめた。



「カッコいい人一杯見てるけど、やっぱり航平君が一番だよ?入学した時からずっと変わらないもん」

「へぇ・・?」


頬を赤くしてはにかむ鞠子は、いつもより可愛く見える。

そんな鞠子を見つめながら、あたしは少しどぎまぎした。



素直な鞠子は可愛い。

だけど、何だか胸がソワソワして落ち着かない気がする。


「ちょっとは動揺する?」

「え?」


気付くと葵が、頬杖をついてニヤニヤしながらあたしを見つめていた。


「ちょっとは焦る?」

「なんで?」


あたしは首をかしげると、鞠子の視線の先に居る航平を見た。


「別に焦らないよ?」


きっと、いつか航平にも彼女が出来て、あたしから離れていく。

覚悟はしているけれど、そう考えると少し寂しいのは、あたしと航平が長く一緒に居過ぎたせいだ。


「兄を誰かに取られる妹・・・そんな感じかな?」

「何よそれ」


葵はそう言って苦笑すると、航平チラリと見てため息を吐いた。



「ご愁傷さま」


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