夢みたもの
「堤君だって、分かってるでしょう?」

「航平?」


声をかけると、航平は目を閉じて一息吐く。


「確かに、一之瀬さんの言う通りだ」


目を開けた航平は、いつものように優しく笑った。


「ごめん、ひなこ。今朝の騒ぎのせいで、つい過敏になっちゃった」

「・・・うぅん、全然」


あたしは首を振りながら、思わず胸ポケットを押さえた。


中からカサリと音がして、そこにある事を主張する。

この事は、絶対に航平には言えない。



「じゃぁ、先帰るね」

「うん。埋め合わせはちゃんとするから」


そう言うと、航平はあたしの頭に手を置いてニッコリ笑った。


「了解、約束だよ」

「うん」

「じゃ、またあとで」


航平はそう言うと、軽く手を振って教室を出て行く。



「甘やかすのは良くないと思うわよ?」


葵があたしを見て呆れ顔で言った。


「堤君が独占欲を持っちゃう原因は、ひなこにもあると思うけど?」

「そんなんじゃないよ」

「じゃぁ、彼に対して、何か後ろめたい事でもあるの?」

「別にそんなんじゃ・・・」


あたしが言葉を濁すと、葵は肩をすくめて笑った。


「まぁ、別にいいわ。さっさと掃除を終わらせるわよ?今日は生徒会の仕事が忙しいの」


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