夢みたもの
その事を気に留めた様子の無い彼は、続けて書いたノートをあたしに向ける。



『2回目は、この教室の入口。君は慌てて行ってしまったけど』



「・・・・・」



『会えて嬉しかった』



「・・・え?」



『だから 3度目は自分から ちゃんと会いたいと思った』



「‥‥」



『今朝は 君を見つけられた事が嬉しくて、つい あんな事をしてしまったけど』



あたしの視線は、彼とノートを行ったり来たりしていたけれど、次第に彼を正面から見れなくなった。



顔が熱い。

恥ずかしくてたまらない。


普段、似たようなニュアンスの言葉を航平が冗談で言ったりするけれど、それの比じゃない。

書かれた言葉だから余計なのかもしれないけれど、恥ずかしくてたまらなかった。

胸の鼓動が耳元で大きく聞こえる。

自分が赤くなっている事を自覚しながら、フラフラと視線をさまよわせていたあたしは、彼が次に書いた言葉に釘づけになった。


「・・・え?」



心臓がドキっと大きく動く。

さっきまでの感情が音を立てて引いていって、さっきまでとは違う意味で鼓動が早くなる。



何?

どういう意味?



胸の鼓動が警告している。

あたしはそう思いながら、ノートに書かれた言葉を見つめた。



『あの頃より 綺麗になった君に』


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