夢みたもの
「あの・・・言ってる意味、分かんない」


あたしは呟くように言った。


胸の鼓動が激しく警告してる。

さっきまでと違って、不安な気持ちで一杯になる。



昔よりも・・・って、どういう事?

昔、あたしと彼はどこかで会ってる?



会っているとすれば・・・



それは、あたしの記憶が抜け落ちた過去以外に考えられない。

思い出したくない過去の中で・・・という事だ。



あたしは息を飲んで、恐る恐る彼を見上げた。


目の前に立っているのは、淡い茶色の髪と瞳を持った、まるで外国製の人形のように完璧な男子。

いくら記憶を探っても、目の前の彼の事を思い出せなかった。


「ごめんなさい。あたし・・・あなたと昔、会ってるって事?」


不安で一杯になりながら、あたしは彼を見つめた。



『覚えてない?』



目を見開いて、彼は驚いたようにあたしを見る。

やがて、あたしの言葉が冗談じゃないと分かったのか、小さく息を吐くと、ペンをノートに走らせ始めた。


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