夢みたもの
『小さい頃、ほんの少しの間だけ一緒に過ごした』
「・・・・・」
『樫の木に囲まれた白い洋館 覚えてない?』
あたしが首を振ると、彼は再びペンを走らせる。
『白いピアノと暖炉 それが君のお気に入りだった事は?』
申し訳なく思いながら、あたしは再び首を振った。
「ごめんなさい。本当に覚えてないの」
「思い出したくない」・・・とは言えなかった。
動かしていた手を止めて、彼はため息を吐く。
そして、もう少しだけ書き加えると、あたしにノートを差し出した。
『父の仕事の関係で、短い期間しか一緒に居られなかったけど・・・。君の事が気がかりだった』
『だから 会えて嬉しい』
「ごめんなさい」
ノートを閉じて彼に返すと、あたしは彼の視線を避けるように頭を下げた。
何も思い出したくない。
思い出さなくていい。
ずっとそう思ってきた。
あたしの人生に、幼い頃の記憶はいらない。
時々、ふとした時に思い出しかけるけど、その度に、必死に心に蓋をする。
今のままで・・・
いつも通りの毎日を送る事があたしの望みだから。
「・・・・・」
『樫の木に囲まれた白い洋館 覚えてない?』
あたしが首を振ると、彼は再びペンを走らせる。
『白いピアノと暖炉 それが君のお気に入りだった事は?』
申し訳なく思いながら、あたしは再び首を振った。
「ごめんなさい。本当に覚えてないの」
「思い出したくない」・・・とは言えなかった。
動かしていた手を止めて、彼はため息を吐く。
そして、もう少しだけ書き加えると、あたしにノートを差し出した。
『父の仕事の関係で、短い期間しか一緒に居られなかったけど・・・。君の事が気がかりだった』
『だから 会えて嬉しい』
「ごめんなさい」
ノートを閉じて彼に返すと、あたしは彼の視線を避けるように頭を下げた。
何も思い出したくない。
思い出さなくていい。
ずっとそう思ってきた。
あたしの人生に、幼い頃の記憶はいらない。
時々、ふとした時に思い出しかけるけど、その度に、必死に心に蓋をする。
今のままで・・・
いつも通りの毎日を送る事があたしの望みだから。