夢みたもの
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そう 思い出した。

わずかな期間だったけれど、とても幸せだった記憶。


幸せ過ぎて、失った事が認められなくて

辛い記憶と一緒に心の奥にしまいこんでいた。



今、目の前に居るのは、あの頃よりずっと大人になったユーリ。

昔と変わらず、綺麗に整った顔立ち。


でも。


あたしはユーリを見つめながら、内心で首をかしげた。



あたしより2歳年上のユーリが、同学年の編入生?

雰囲気も昔と違っている。

何より、あの綺麗な声は・・・・

どうして声が出ないの?



そんなあたしの考えを読んだかのように、ユーリはノートにペンを走らせる。



『色々あって・・・君に会いに来るのが遅くなった』



「そう」



『あれから少しして 引き取られたって聞いていた』



「え?」


続けて書かれた言葉を、あたしはまじまじと見つめた。

・・・・あれから・・?



『今の家族がそう?』



「・・・あ・・・」


気にかけてくれていた。


あの時別れて、それで終わりじゃなかったんだ。

あたしは少し驚きつつ、その事が凄く嬉しくて、何度も頷いた。


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