夢みたもの
「別にいいよ」

「え?」


顔を上げると、宮藤君がつまらなそうに肩をすくめていた。


「ま、俺には関係ないし」

「・・・本当?ありがとう」


ちょっと拍子抜けしつつも安心してそう言うと、宮藤君は射るような視線を向けて小さく笑った。


「黙ってる代わりに、雪村さんが俺とデートするっていうのはどう?」

「・・・・・」

「交換条件、悪くない話でしょ?」

「それは・・・」


口元に笑みを浮かべて、宮藤君はあたしに近付く。


「・・・あの、それは・・・」


宮藤君が近付いた分だけ後退りしたあたしは、ずりずりと後退して廊下の窓の処まで追い込まれた。


「ね?どう?」



体が震えて言葉が出てこなかった。



怖い

それ以上近付かないで・・・・



こんな時、航平が居てくれたら助けてくれるのに。


そんな都合の良い事を考えながら、逃げ場を失ったあたしは身を縮めて目を瞑った。




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