夢みたもの
「・・・くっ・・・」


・・・・?・・・・


目を瞑っていたあたしは、突然聞こえたその声に、恐る恐る目を明けた。


「・・・・・?」


目の前には、肩を震わせて笑いを堪えている宮藤君の姿。

両手で抱えた荷物に顔を埋めて、クックッ・・・と小刻みに肩を震わせている。


「冗談だよ」

「え?」


呆然として宮藤君を見つめると、彼は楽しそうに声を上げて笑った。


「前にも言ったけど・・・、俺、友達のモノに手出したりしないよ」

「・・・・・」

「確かに、雪村さんとのデートはかなり魅力的だけど、それで堤を敵に回したくないからね」


「安心してよ」宮藤君はそう言うと、あたしから数歩離れて小さく笑った。


「冗談・・?」

「雪村さんの反応を見てると面白くて。つい・・・ね」


楽しそうな表情で頷いた宮藤君を見て、あたしはため息を吐いて胸を撫で下ろした。


さすが航平の友達というべきか・・・何考えてるのか、サッパリ分からない。


安心と同時に、からかわれた事に対する不愉快さを感じて、あたしは宮藤君からあからさまに顔を背けて廊下を歩きだした。



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