夢みたもの
「ごめん、怒った?」


笑いを堪えるような口調でそう言うと、宮藤君はあたしの数歩後ろを歩き出した。


「へえ?雪村さんでも怒ったりするんだね?」


人の事を何だと思っているのか、あたしの反応を楽しむかのように声を掛けてくる。


「そんなに怒らないでよ?冗談だって。まぁ、怒った雪村さんも可愛いけどさ」

「付いて来ないで!」


あたしはイライラしながらそう言って振り返った。

ユーリの事を誤魔化して、音楽室から遠ざかる事が出来たのは良かったけれど、ずっと後ろを付いて来られるのは迷惑だった。


「人の事からかって・・・・迷惑なの」

「だから、ごめんって」


宮藤君はあたしと少し距離を取って立ち止まった。

相変わらず面白そうな表情であたしを見つめている。


「堤が大切にしてる子だと思ったら、興味が湧いてさ」


まだあたしと航平の仲を誤解している。

あたしはイライラしながら投げ捨てるように言った。


「前にも言ったけど・・・あたしと航平は別に何でもないから」

「そうなの?あれ本気で言ってたんだ!?」


宮藤君は目を見開いてそう言うと、あたしから視線を少しだけずらして、口元を歪めて笑った。



「そりゃ可哀想に」


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