夢みたもの
『ごめん。嫌な思いをさせてしまった』



ユーリは申し訳なさそうな顔のまま、あたしに頭を下げた。



『美野里(ミノリ)さんは悪い人じゃないんだけど・・・ちょっと勘違いをする時があって』



前に同じようなフォローを聞いた事がある。

あれは確か・・・航平が宮藤君をフォローした時。

宮藤君も美野里さんという店員も、2人にとってそれぞれ大切な存在なんだろう。


あたしは軽く手を振ると、ユーリに笑いかけた。


「そんなの気にしないで!それより、ユーリの方が変な誤解されて迷惑じゃない?」



『僕は、迷惑だなんて思わない』



相変わらず表情に乏しいユーリ。

でも、真面目な顔でそう言われると・・・それが紙に書かれた言葉だから尚更なのか、真に迫ってくる気がした。


「あ、えっと・・・」


何だか恥ずかしくなったあたしは、慌てて話題を変えた。


「あ・・・ここって、叔父さんの仕事の関係で・・・って言ってたよね?叔父さんって、何してる人なの?」


「ここの経営?」そう付け加えて首をかしげると、ユーリは、その細くて繊細な指を伸ばして、あたしの後ろを指差した。


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