夢みたもの
「でもね、ひなこちゃん?」

「・・・・?」


その声に顔を上げると、崇さんは優しく微笑んでユーリを見つめていた。


「僕は、悠里は治ると信じてる」

「・・・・」

「この2年間。悠里はずっと苦しんできた。一歩も前に進めず、ただ時間だけが過ぎてきた。・・・でも、」


崇さんはあたしを見て、嬉しそうに微笑んだ。



「悠里は、君を見つけた」

「・・・え?」

「全て諦めて・・・何も求めなくなっていた悠里が、君を捜し求めて・・・そして見つけた。それは、とても大きな一歩だと思う」

「そんな事・・・。だって、あたしユーリに何もしてあげられない」


首を横に振ったあたしに、崇さんは柔らかく微笑んだまま、静かに首を横に動かした。


「ただ、側に居てあげて欲しい」

「でも・・・」

「悠里を救う事が出来るのは、きっとひなこちゃんだけなんだ。勝手なお願いだけど・・・悠里の側に居てあげて欲しい」

「・・・・・」


眼鏡の奥から真っ直ぐあたしを見つめる崇さんの真剣な瞳に、あたしは思わず頷いていた。



「ありがとう。ひなこちゃん」


崇さんは嬉しそうに微笑むと、あたしに頭を下げた。



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