夢みたもの
「別に忙しくないのよ。ただ、宮藤君が『連絡事項がある』って呼び出すから。貴重な昼休みなのに、いい迷惑だと思わない?」

「まぁ、昼休みぐらいはゆっくり過ごしたいね」
「でもさぁ、呼出しがあるぐらいの用事って、何?」


好奇心一杯の表情をして、鞠子が身を乗り出してくる。

葵はそんな鞠子をチラリと一瞥すると、牛乳を音を立てて飲み干した。


「教えない」

「何で何で?気になる〜」


鞠子の頬がパッと赤く染まる。

葵は澄まし顔でゴミをまとめるとニヤリと笑った。


あぁ、まただ。

あたしは小さくため息を吐く。


葵が愉しそうに目を三日月にして笑う時。

それは鞠子をからかって遊ぶ時だった。


黙っていれば、誰もが羨む美人なのに。

そう思うあたしの前で、二人は戯れあうように話し始める。

< 20 / 633 >

この作品をシェア

pagetop