夢みたもの
「ちょっと、鞠子?何言ってんの!?」


あたしは慌ててそう言った。

どこをどう勘違いしたら、あたしと航平が付き合っているという仮説が出来上がるんだろう?

ユーリの事がバレていなかった事にほっとしつつ、あたしは鞠子の話に呆れてため息を吐いた。


「違うよ。そんな訳ないでしょ?」

「え〜・・・違うのぉ?」


唇を尖らせて残念そうな声を出しつつ、いまだ期待を込めてあたしを見る鞠子の頬に、あたしは冷たい紅茶の入ったペットボトルを押し付けた。


「とりあえず、これ飲んで落ち着いて?」

「ホントに違うのぉ?」

「違うって!当たり前でしょ!?」

「興味深い仮説だったけど・・・残念だったわね、鞠子?」


葵がニヤニヤ笑いながら鞠子に言った。


「現実は、鞠子が考える程甘くないって事ね」

「もぉ〜、葵ちゃんはいつもそうやって楽しんでるんだから!」

「そんな事ないわよ。いつも鞠子の一直線な言動と行動に感心してるわ?」

「それ・・・褒めてんのか、貶してんのか分かんないんだけどぉ?」

「もちろん褒めてるのよ?」


鞠子は顔を赤くして頬を膨らませると、プイッと横を向いた。

葵はそんな鞠子の頭をポンポンと軽く叩くと、笑いを堪えながら言った。


「ほら、鞠子?職員室に行く用事があるんでしょ?」



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