夢みたもの
「葵ちゃんばっかり、色んな事知ってるなんてズルイ!減るもんじゃないし、いいじゃん!?」

「減るわよ。大体、これは生徒会役員の特権なの」


「それに‥」と葵は鼻で笑って続ける。

「「私が言わなくたって、鞠子は自分の鼻で嗅ぎとってくるじゃない?」

「鞠子、犬じゃないもん!」

「あら、そうだった?」


「二人共、いい加減にしなよ〜」


小悪魔的な笑みを浮かべた葵と、頬を上気させた鞠子のやり取りはいつもの事。

とりあえず仲裁に入ってはみるものの、あたしは笑って二人を眺めた。


「ま、冗談はこのぐらいにして」


やがて葵は飽きたのか、机に頬杖をつくと、つまらなそうに一息ついた。

鞠子の「鞠子 また遊ばれた!?」と言う言葉は、いつものように黙殺される。


「さっきの話だけど、特クラに編入生が来るらしいわよ?」

「編入生?」


少しドキリとした。

先に知っている事への後ろめたさなのか、興味を無くしかけていた事が、再び目の前に戻ってきたからなのかは分からない。

航平と話した『訳アリ』を知る事が出来ると思ったからかもしれない。


何にしても、あたしはドキドキしながら葵の次の言葉を待った。

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