夢みたもの
「何もかも鞠子の期待通りに動く筈ないでしょう?」

「分かってるよぉ。ちょっと言ってみただけだもん」


頬を膨らませた鞠子は、プイッと横を向いた。


「あ、でも、確かに変だよね?」


鞠子の言葉を繋ぐように、あたしは葵に言った。


「普通の編入生だったら、生徒会は関わらないでしょ?それに、時期的に中途半端じゃない?」


葵は「まぁね‥」と呟いて頭を掻くと、言いにくそうに声を落とした。


「ここだけの話、その編入生‥身体的に問題があるらしいの」

「病気?」


『訳アリ』の意外な結論に、あたしは少し拍子抜けしていた。


なんだ・・・そうなんだ。

航平が勿体ぶって話していたから、毬子と同じように、芸能人じゃないかとちょっとでも期待していた自分が恥ずかしくなる。


「そんなに重病なの?その人?」

「ん〜・・・、そういうんじゃないんだけど」


葵が何とも言いがたい表情で言い掛けた時。


「・・・ひゃっ!?」


頬に冷たい物を押し付けられて、あたしはビックリして声を上げた。


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