夢みたもの
驚いて後ろを振り向くと、ニコニコ笑って立っている航平と目が合った。


「航平!!」

「ビックリした?」


上着を無造作に左肩に掛け、コーラの缶を右手に持った航平は愉しそうに笑った。


「も〜、邪魔しないで!?」

「だって3人共、難しそうな顔してるんだもん。折角の休み時間、神妙な顔して何話してんの?」

「それは・・・」

「秘密よ」


あたしが答えるより早く、葵がピシャリと言った。


「女子だけの秘密」

「葵・・」


たぶん、秘密にしておく必要はない。

航平には宮藤君から話が流れる事ぐらい、葵は分かっているだろう。

ただ、いつも凜としている葵は、男子に対して少し冷たい。

大抵の男子は、葵の見た目とのギャップにたじたじになる。


「・・ふぅん?まぁ、色々あるからね」


でも、中学時代から葵を知っている航平は、気にした様子もなく、いつもさらりと受け流す。


さすがだ。

いつもの事ながら、ちょっと感心して、あたしは航平と葵を見つめた。

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