夢みたもの
この前の土曜日から、あたしと航平の間には、何となく気まずい雰囲気があった。

一緒に登下校するし、夜の課外授業も変わらずしているけれど・・・、お互いどこか気を遣って、今までのように踏み込んだ話が出来ない。


航平とこんな状態になったのは初めてだった。


「えっ・・・と、航平は駄目だと思うよ・・・?」

「あら、ケンカでもした?」

「・・・・・!」


思わず葵から視線を外すと、葵は「ふぅん?」と呟いて顔を上げた。


「珍しい事もあるわね?」

「・・・や、でもケンカって言うか・・・」

「だから最近、堤君の様子がおかしいのね?」

「・・・え?」

「先週までとは打って変わって、様子がおかしいと思ってたのよ」


「納得したわ」そう付け加えて葵が肩をすくめた時。

廊下からバタバタと音がして、鞠子が教室に飛び込んできた。


「ひなこ!!」


鞠子はあたしの名前を叫ぶと、一目散に駆け寄ってくる。


「ひなこ、どういう事!?」

「・・・え、なに?」


顔を真っ赤にして興奮気味の鞠子は、あたしにつかみかかりそうな程近付くと、鼻息荒く声を上げた。


「ひなこと叶君が付き合ってるって・・・、いつもコソコソ会ってるって・・・、何なのそれ!?ホントなの!?」

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