夢みたもの
「ねぇねぇ、ひなこ?」


そんな二人を眺めながら、鞠子はあたしに擦り寄って小さく耳打ちする。


「やっぱり 航平君ってカッコいいねぇ・・・」

「え?」

「あの葵ちゃんと普通に話せるのも凄いけどさぁ・・・。でも、背も高いし、顔も頭も良いって最高じゃない!?」

「うん?そうかなぁ?」


そうなんだろうか。


鞠子の『航平贔屓』は今に始まった事じゃない。

毎日のように聞かされるから、今では「おはよう」と挨拶されるぐらい日常的なセリフ。

確かに、世間一般的に見れば、航平は『カッコいい』部類に入ると思う。

整った顔立ちだし、性格も悪くない。

でも、幼い頃から知っているからか、あたしは航平を『幼なじみ』という括り以外で見た事がない。



違う。


それ以前にあたしには、恋愛感情がよく分からない。

『好き』と『嫌い』は分かるけど、『特別好き』が分からない。

それを理解出来たら・・・

あたしは、幸せを手に入れられるのかもしれない。

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