夢みたもの
「‥‥まぁ、どう受け取るかは雪村さん次第だけど‥」


肩をすくめた宮藤君に大きく頷き返したあたしは、その瞬間、ふと気付いた事実に表情が強張っていくのを感じた。


「あ‥でも‥‥」


あたしはため息を吐いてうつむいた。


「航平‥目も合わせてくれないのに‥‥」


宮藤君の言葉に浮かれていたけれど‥‥状況は全然変わっていない。

浮かれていた心が一瞬で萎んで、嬉しさの反動は前より気持ちを落ち込ませる。

どうしたら前みたいな関係に戻れるのか‥、その為に何をしたら良いのか‥‥見当もつかない。



「それは、それぞれが変わるしかないよ」


見兼ねたように宮藤君が言った。


「その答えを他人に求めても、満足する解答は得られない」

「‥‥」

「言った筈だよ?さっきの気持ちを大切にするべきだって」

「‥‥」


さっきの気持ち‥‥

心が暖かくなる程の嬉しさ。

あの気持ちは‥間違いなくあたしの本心だ。


航平を失いたくない。

その気持ちも‥‥間違いなくあたしの本心。


さっきの感覚が戻ってきて、あたしの心が再び暖かくなる。

勇気を出せそうな気がした。



「‥‥!!」


‥‥でも、次の一瞬。

ユーリの顔が頭をよぎった。


胸が締め付けられるように苦しくなる。


その痛みはまるで‥‥

この気持ちがユーリに対する裏切りだと責めているようだった。



< 304 / 633 >

この作品をシェア

pagetop