夢みたもの
さすが葵だ。

感心して見つめるあたしの前で、葵は頭を押さえてため息を吐いた。


「まったく、あの2人は・・・」

「ありがと」


あたしが声をかけると、葵は顔を上げて、何でもないといった表情で笑う。


「私は、あの2人を掃除に戻らせただけよ?ひなこも大変ね」


「凄く大切にされて」そう付け加えた葵に、あたしはしかめっ面を返した。


「全然嬉しくない」

「過保護な幼なじみを持ったのが運のつきよ。諦めるのね」


肩をすくめてサラリと言い切った葵は、その直後、思いついたかのように航平を呼び止めた。


「堤君」


そして、航平が振り向くと、あたしの腕に手を回してニヤリと笑った。


「言い忘れてたけど、今日のひなこは私のものよ?」

「え?」


航平は不可解な顔をして首をかしげる。


「葵?」


あたしが声をかけると、葵は楽しそうに笑って言葉を続けた。


「今日は茶道部の活動日なの。図書室行って暇してるなら、客役で役に立ちなさい?」

「え・・・また?」

「ただ座って、お菓子食べてお茶飲んでればいいのよ?楽なものでしょ!?」

「そうだけど・・・」


思わず口籠もったあたしは、上目遣いに葵を盗み見た。

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