夢みたもの
「‥‥え!?‥ちょっ‥‥」


言葉が出てこなかった。



突然の事に驚いて‥‥

体が全然動かない。


さっきより距離が近くなった事で、破裂しそうな心臓が悲鳴を上げた。


「‥‥ちょ‥ちょっと‥‥離れて‥?」


さっきより強く、航平の胸を押しながら‥やっとそれだけ言えた。



頬が熱い。

体は緊張で震えている。

‥‥頭の中は真っ白だった。



「‥‥ひなこを誰にも渡したくない」


やがて、絞り出すような航平の声が聞こえた。


「ひなこだけは‥‥絶対に‥」


「‥‥」


「‥‥奪われる位なら‥嫌われた方がマシだよ‥‥」


「‥‥え?」


肩にかかっていた重みが消える。


そして、次の瞬間。

航平の顔があたしに重なって、あたしと航平は唇を重ねていた。



近過ぎる距離。

唇に触れる感触‥‥


目を閉じる事も、息をする事も出来なくて‥‥

あたしはただ呆然と立ち尽くした。



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