夢みたもの
‥‥そう‥

昔に比べれば、今なんて何でもない。


陰口を言われたって‥

友達が離れていったって‥‥


‥‥大切な存在を、失いかけていたって‥‥



ユーリはあたしを見つめたまま、小さくため息を吐く。

それは、強がるあたしを心配するようでもあり、呆れているようでもあった。

やがて、あたしの目の前に、ノートがそっと差し出される。


『無理に笑う必要はないよ』

「‥‥え?」

『辛い時は、誰かを頼っていい。自分一人で抱え込む必要はないよ』


ノートにそう書き綴ったユーリは、あたしが読んだのを確認すると、続きを書いてあたしに見せた。


『耐えるだけが全てじゃない』

「‥‥」

『弱さを曝け出す事は、耐える事以上に勇気がいる。でも、それを受け止めてくれる人は絶対に居るから‥‥安心していい』

「‥‥」


『僕は、ひなこの力になれる?』


最後を疑問符で結んだ処がユーリらしくて‥‥あたしは小さく笑った。


「うん‥‥ありがとう」


何も聞かず、ただ側に居てくれる。

それだけで、心が癒されるような気がした。



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