夢みたもの
「‥‥!?」


背表紙に書かれた題名に目が釘付けになる。



「‥‥これ‥」


思わずそう呟いてユーリを見た。


信じられない。

あんなに嫌がっていたのに‥‥



あたしの視線を追ったのか、ユーリは譜面台の本を見て僅かに目を見開く。

そして、ため息混じりに小さく頷くと、ノートにペンを走らせた。



『決めたんだ』

「え?」

『僕は、もう逃げない』

「‥‥」

『ひなこの為、自分の為に、僕は過去から逃げないと決めた』


「‥‥ユーリ‥」


その言葉に驚きと感動を感じながら‥、あたしはまじまじとユーリを見つめた。


「ホントに‥?」


「本当にリハビリしてくれるの?」


あたしの質問にユーリは少しだけ微笑むと、今度はハッキリと強く頷いた。


『本当だよ』

「‥‥本当‥」


オウムのように繰り返して、やっと‥その言葉の意味を理解した。


ユーリが声を出そうとしている。

過去から決別しようとしている‥‥


変わった。

強くなった。


ユーリが変わろうとしているのがひしひしと伝わってくる。

あたしを真っ直ぐ見つめる瞳は力強くて‥‥

視線を絡め取られそうになったあたしは、慌ててユーリから視線を外した。



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