夢みたもの
「女の子2人で何の話?」


宮藤君はそう言うと、あたしと葵の目の前に腰を下ろして小さく笑った。


「さすがの副会長も、体育はサボってるって噂になるよ?」

「そんな噂、聞いた事ないわ」


無愛想に答えると、葵は新たに始まった試合を指差した。


「試合、始まってるわよ?」

「俺は休憩中。さっきの試合で活躍してたの見なかった?」

「見てないわ」

「酷いなぁ‥、生徒会のよしみで応援してくれないの?」

「どうして私が?」


宮藤君は再び「酷いなぁ‥」と呟くと、苦笑しながらあたしを見た。


「雪村さんは、少しは元気になったみたいだね」

「え?」

「やっぱり、最近ぐんと男を上げた堤のせいかな?」

「‥‥」

「最近の堤は、憂いを帯びて‥前より格好良いってさ。女子が騒いでるよ」


宮藤君は、思わせ振りにあたしをチラリと見て笑った。


「まぁ、雪村さん絡みだって事は、聞かなくても分かる」

「‥‥」

「ま、恋愛には障害がつきもの。堤もやっとそこを理解したって感じ?」

「不誠実な噂を垂れ流してる人が偉そうに言う事じゃないと思うけど?」

「言葉に重みがあると言って欲しいね」

「それって自慢する事かしら?」


葵が苦笑すると、宮藤君もつられたように声を上げて笑った。



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