夢みたもの
いつものようにニッコリ笑った航平に、誰よりも早く宮藤君が反応する。


「そろそろ俺に乗り換えないかな?‥って雪村さんを口説いてたとこ」

「えっ!?」


驚いて声を上げると、宮藤君が楽しそうに航平を見つめていた。


「前々から誘ってるんだけど‥ね?」


そう言って、今度はあたしに視線を投げ掛けた宮藤君は、あたしの表現を見て小さく吹き出した。


「あぁ‥ホント見てて飽きないな」

「‥‥」

「その顔見てると、ちょっかい出したくて堪らなくなる」

「からかうのもいい加減にして」


葵が不機嫌そうに口を挟んだ。


「失礼じゃない」

「いや‥だってさ‥‥」


楽しそうにクックッと肩を振るわせる宮藤君と、呆れた様子でため息を吐く葵。

学校始まって以来、教師すら口を挟むのを控える完璧な生徒会を作り上げた2人。

そんな2人に、あたしが口答え出来る筈がない。


やがて、航平があたしの肩を引き寄せてのんびりと言った。


「駄目駄目。そんなにひなこを困らせないでくれる?」

「航平」

「ひなこは君達と違って純粋なんだから」

「‥‥」


あたしの肩を掴む航平の腕の力に、自然と鼓動が速くなる。

その事が、何よりあたしを戸惑わせた。



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