夢みたもの
以前はこうじゃなかった。


航平のスキンシップはいつもの事。

時々、あたしをからかって、不必要に混乱させられる事はあったけど‥‥

今みたいな状況で鼓動が速くなる事はなかった。


どうして?

何で?


ただ、肩に触れられているだけなのに‥‥

どうしてこんなにドキドキするんだろう。


考えれば考える程、胸が苦しい。

頬が火照って、航平を直視出来ない。



そんな戸惑うあたしを、葵が小さく微笑んで見つめていた。


「え‥なに?」


誤魔化すように慌てて首をかしげたあたしに、葵はフフッと小さく笑う。


「ごめん‥でも、ちょっと安心したわ」

「え?」

「大丈夫。‥‥堤君に任せておけば大丈夫よね?」

「‥‥え?」

「もちろん」


あたしが答えるより早く、航平がニッコリ笑って言った。


「大丈夫。ひなこは俺がちゃんと支えるから」

「お、格好良い事言うね」

「うるさい」


宮藤君の茶々に間髪入れず言い返すと、葵は航平に頷き返した。


「そうね‥今の堤君なら大丈夫そうだわ」



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