夢みたもの
「そう‥雰囲気が良いわ。でも何より‥、前より表情が柔らかくなった気がするの」

「はい」

「もぅ‥時折見せる笑顔が最高!!悠里君があんな表情するなんて思わなかったわ。あれは女を虜にするわよ」

「‥‥」

「現に、最近夕方からの女性客が凄く増えてる。彼目当てなのが手に取るように分かるわ」

「‥‥はぁ」


嬉々として話す美野里さんに、あたしは複雑な思いで受け答えた。


ユーリの魅力を沢山の人に知ってもらいたい。

その気持ちは本当。

でも、今まであたししか知らなかったユーリの魅力を、他人が軽々しく口にするのは面白くない。

それが表面上のものであれば尚更そう。


もっと‥

もっとユーリの中身を知って欲しい。


優しくて

明るくて

周りの人を自然と笑顔に、幸せにするユーリ。

心の傷を抱えたユーリは昔より儚げで‥美しさに磨きがかかった。

感情が出るようになったからか、前より人間味が増して親しみやすくなった。


それは凄く良い事だと思う。


思うけれど‥‥

面白くない。



「あたしって嫌なヤツだ‥‥」


ため息混じりにそう呟いた。



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