夢みたもの
「大丈夫ですか!?」


膝まづいた救急隊員が、あたしの顔を覗き込んだ。


「意識はありますね!?」


救急隊員の声に、あたしは小さく頷き返す。

そして、脈を取る為に手首に触れられた時。

ずっと携帯を握り締めたままだった事に気付いた。


「持ってて‥?」


小さく頷いた航平が、手を開いて携帯を取ってくれる。

その事に安心して、あたしは長い息を吐いた。



大切なもの。

大切な繋がり。


それを守れた事が、嬉しかった。



「来てくれて‥嬉しかった」

「‥え?」


ビクッと肩を震わせた航平に、あたしは小さく笑いかけた。


「ずっと‥、航平が来てくれるの待ってたから」

「‥‥」

「トラックが近付いてきた時‥、あたしの名前‥呼んでくれたでしょ‥‥?」

「‥‥」

「嬉しかったよ?」


「念の為病院に搬送します」


救急隊員がそう言って、あたしをストレッチャーに乗せる。

その間、航平は少し離れた処に立って‥‥

相変わらず、泣きそうな顔をしていた。



< 457 / 633 >

この作品をシェア

pagetop