夢みたもの
「でも、あたしで良いの・・・?」


小さく尋ねた。

通夜の時に見た、立派過ぎる葵の家。

お嬢様の葵には、あたしなんかより相応しい友達が居る筈だった。


「雪村さんだから」

「え?」


照れ臭そうに視線をさまよわせながら、葵はポツリと言った。


「雪村さんだから、友達になって欲しいって思ったの」


「それに」と、葵はあたしの目を見つめてニッコリ笑った。


「私は『一之瀬』としてじゃなく、ただの『イチノセ葵』として友達になって欲しいの」

「ただの・・・イチノセ?」

「そう。家の事なんて関係ない。私は私だもの」


「だから、私の事は『葵』って呼んで欲しいの」

「葵?」


あたしがそう呟くと、葵はニッコリ笑って頷いた。


「駄目?」


再び首をかしげた葵に、あたしは首を振って笑い返した。


「あ・・・葵が、それで良いなら。でもそれなら、あたしの事も名前で呼んでね?」

「・・・ひなこ?」

「うん」


あたしと葵は、初めて顔を合わせて二人して笑った。


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