夢みたもの
「‥‥!?」


外は日が暮れて真っ暗。

窓ガラスには病室の風景が映っている。


「‥‥やだ‥」


気持ちを落ち着かせる為に視線を逸らしたのに、窓ガラスに映った自分の姿に動揺する。

忙しなく視線をさ迷わせながら、あたしは小さく呟いた。



「もぅ‥ホント相変わらず、そういう恥ずかしい事平気で言うんだから‥‥」

「あれ?気に入らない?」


航平の声は明るく弾む。


「ホントの事言っただけなんだけど‥?」

「だからっ‥!!」


少し声を荒立てて振り返ったあたしは、その続きを口にする事が出来なかった。


「‥‥!!」


目の前で穏やかに微笑む航平。

それは文句のつけようが無い程の笑顔で‥‥

その向けられた優しい瞳に絡め取られたように、あたしは身動き出来なかった。


「そんな風に‥」

「‥‥」

「そんな風に、いつも笑ってて‥?」


あたしの頭に軽く手を置いた航平は、その手をあたしの頬に移して微笑む。


「いつも笑ってて欲しい」

「‥‥」

「‥‥ね?」


航平の指が触れた処から、頬が熱を帯びていく。

航平から目が離せなかった。


鼓動がどんどん速くなって‥‥

息苦しさを感じ始めた時。


一瞬、寂しそうな表情を見せた航平は、す‥っとあたしから手を離した。



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