夢みたもの
信じられない。

夢なんじゃないか‥‥そう思った。



カールした淡い茶色の髪。

その奥に見える彫りの深い目鼻立ち。


そして


あたしを見つめる優しい茶色の瞳。



そのどれもが、前と何一つ変わらない。



「‥ユーリ‥‥」


それ以外の言葉が出てこなかった。



痛いぐらい胸が苦しくて、涙がこぼれる。

後から後から‥‥

こぼれ落ちる涙が音を立ててシーツの上に落ちていった。


「‥‥ふっ‥」


嗚咽を洩らして、あたしは涙を拭う。

でも、拭うそばからあふれてくる涙は、いつまで経っても止まりそうになかった。



「‥‥!?」


ユーリが手を伸ばす。

そして、あたしの涙を拭うと、その手をそっと‥あたしの頬に添わせた。


少し冷たいユーリの手。

その手を包むように、あたしは自分の手を重ねる。



夢じゃない。

この手の感覚、目の前の優しい眼差し。


本当に、現実なんだ。


「‥‥よかった‥」


そう呟いたあたしに、ユーリが優しく微笑む。

そして、ゆっくり唇を動かした。



「ひなこ」



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