夢みたもの
あぁ・・・まただ。

あたしは小さくため息を吐いた。


ここにまた、あたしと航平の仲を誤解している人が居る。

あたしと航平は、そういう関係じゃないのに。

あたしはそう思いながらも、それを訂正するのも面倒で、ただ黙って首をかしげた。


「宮藤、仕事あるんだろ?」


珍しく、航平が牽制するように言った。


あたしも航平も、昔からからかわれる事には慣れている。

だからこういう時には、いつも笑って交わすのが常。

でも、今日の航平は機嫌が悪いのか、宮藤君を軽く睨むようにして言った。


「早く行けよ?」

「航平?」

「例え宮藤でも、ひなこをからかうのは許さない」

「ん~?からかってるつもりはないけどね」

「なら・・・もっとタチが悪い」

「ちょっと、航平?」


嫌な雰囲気を感じたあたしは、慌てて2人の間に入った。


どうしてこんな変な雰囲気になったのか良く分からない。

とにかくこの場を取り繕っておこう、そう思ったあたしは2人に笑いかけた。


「何か変だよ?2人共?」


宮藤君はともかく、航平が笑顔を絶やすのは珍しい。

いつもと違う雰囲気に動揺しているのは、実はあたしだった。


「・・・ね?」


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